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初鰹:江戸っ子が「女房を質に入れても」食べたかった5月の味覚

初鰹:江戸っ子が「女房を質に入れても」食べたかった5月の味覚

By Sushi Matcha Team

「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」

江戸時代の俳人・山口素堂が詠んだこの句を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。目に映る新緑、山から聞こえるほととぎすの声、そして初鰹——5月の日本を五感で捉えた、まさに季節の精髄です。

しかし初鰹は、単なる詩歌の題材ではありませんでした。江戸の人々にとって、それは熱狂の対象。「女房を質に入れても初鰹」という言葉が生まれるほど、この季節の魚は特別な存在だったのです。

「初物」への情熱

江戸時代の日本では、「初物」——その季節最初の収穫——に特別な意味がありました。初物を食べると寿命が75日延びるという言い伝えがあり、人々は季節の走りを競って求めました。

中でも初鰹は別格。江戸っ子たちは鰹を「勝男」という当て字で呼び、縁起物として珍重しました。初鰹を手に入れることは、江戸の粋の象徴。たとえ法外な値段でも、「野暮」を嫌う江戸っ子は迷わず財布の紐を緩めたのです。

歴史の記録によれば、裕福な商人たちは魚河岸の競りで天文学的な金額を叫び、その年最初の一本を競り落としていました。ある記録では、初鰹一本が庶民の年収に相当する価格で取引されたこともあったとか。

春と秋:二つの顔を持つ魚

鰹の面白いところは、年に二度の旬があり、それぞれまったく異なる味わいを楽しめることです。

初鰹(4月〜6月) 黒潮に乗って九州から北上し、5月頃に東京近海に到達します。脂肪分は1〜2%と少なく、さっぱりとした清涼感のある味わい。鉄分を感じるようなキリッとした風味が特徴で、これこそ江戸っ子が愛した「粋」な味です。

戻り鰹(9月〜11月) 夏の間、栄養豊富な北の海で餌をたっぷり食べた鰹が、秋に南下してきます。こちらは初鰹の最大12倍もの脂を蓄えた、まったく別の魚のような濃厚さ。トロのような口どけが現代人には人気です。

現代では脂の乗った戻り鰹を好む人も多いですが、江戸の食通たちは断然、初鰹派。あっさりとした中に凝縮された旨みこそ、鰹の本質だと考えていました。

「本物の初鰹」は5月、相模湾

実は、江戸時代における「初鰹」とは、5月(旧暦4月)に相模湾で獲れた鰹を指していました。北上する鰹が江戸に最も近い海域を通過する、まさにそのタイミングの魚です。

現代では物流の発達により、2月〜3月に九州南部で獲れた鰹が「初鰹」として東京に空輸されてきます。もちろんこれも美味しいのですが、厳密には江戸時代の定義とは異なります。

山口素堂が詠んだ「あの味」を体験したいなら、やはり5月がベスト。そして今も昔も、東京近郊の海が舞台なのです。

たたき:至高の調理法

鰹の代表的な食べ方といえば「たたき」。表面を藁火で一瞬だけ炙り、中は鮮やかなルビー色の生のまま仕上げる調理法です。

この技法は高知県が発祥とされますが、東京の寿司店で芸術の域にまで高められました。あの「すきやばし次郎」の小野二郎氏が、鰹のたたきを寿司ネタとして完成させたと言われています。

香ばしく焼けた表面の食感と燻香、そして冷たく瑞々しい身の鉄分豊かな味わい——このコントラストが鰹たたきの醍醐味です。薬味はおろし生姜、にんにくスライス、そして柑橘の効いたポン酢が定番ですが、一流の寿司店では魚の状態に合わせて調整されます。

浅草で初鰹を味わう

ゴールデンウィーク(4月末〜5月初旬)は、浅草で初鰹を楽しむ絶好のタイミングです。伝統的な旬と、祭りのような賑わいが重なる季節。

寿司店で: 季節のおすすめに「鰹」があれば、ぜひ注文を。「これは初鰹ですか?」「どこで獲れましたか?」と板前さんに聞いてみてください。そんな会話こそ、寿司を味わう醍醐味です。

居酒屋で: 「鰹のたたき」を最初の一品に。生姜とにんにく、ポン酢という王道の組み合わせで、初夏の到来を舌で感じましょう。

自分で作ってみる: 寿司&抹茶クッキングクラスでは、季節の魚をカリキュラムに取り入れています。春のクラスでは、日本料理における「旬」の考え方——食材選びから組み合わせの妙まで——を体験していただけます。

江戸の粋を味わう

5月に初鰹を口にするとき、あなたは単に魚を食べているのではありません。江戸の文化を形作った、数百年にわたる季節への敬意——その伝統に参加しているのです。

目には青葉、山ほととぎす、そして初鰹。江戸っ子なら言うでしょう——「野暮なことは言いっこなし」と。

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